「黒字倒産」という言葉を経済ニュースで見かけることがあります。

黒字なのになぜ倒産するのだろうと不思議に思う人も多いことでしょう。

今回は黒字倒産の基本的なメカニズムと黒字倒産に陥らないために対策をご紹介します。

さまざまな倒産の状態

倒産とは、事業者である個人や法人が支払い不能の状態に陥ることで、正常な経済活動を維持できなくなる状態をいいます。

「倒産」は正式な法律用語ではありませんが、破産法・民事再生法・会社更生法など倒産に関連する法律をまとめて「倒産法」と呼ぶなど、一般的に使われる用語です。

倒産はや債権者からの法的な申立てや銀行からの支払い停止(いわゆる手形不渡り)、経営者の私的な整理の決定などによって起こります。

法的整理と私的整理

倒産手続きには法的整理と私的整理があります。
法的倒産とは、会社更生法、民事再生法、破産法などの法律に基づいて、裁判所の関与のもとに債務の整理を行う手続きです。

債務を清算し事業を終了させる清算型の手続きと、政務整理ののちに事業再建を目指す再建型の手続きがあります。
私的整理とは、事業者が自ら債権者と支払い猶予や債務免除の交渉をして債務の整理を図っていく手続きです。

黒字倒産が起こる理由

企業が倒産状態に陥ってしまうことと、決算が黒字か赤字かということは別問題です。

黒字・赤字は帳簿上の損益がプラスかマイナスかという基準で判断するものであって、資金不足で支払い不能に陥ったとしても帳簿上の損益はプラス(黒字)ということは起こりえます。

予定外のキャッシュアウトや予定していた資金が入金されないことがあると、帳簿上の数字がプラスであるにも関わらず資金不足になることがあるのです。

売上の入金サイトよりも支払いサイトのほうが短い

「入金サイト」とは、売り上げが計上されてから実際に入金されるまでの期間です。

小売店や飲食店の場合には商品・サービスの提供から間もなく代金を受け取りますので、入金サイトは短いといえます。

「支払いサイト」は仕入れをしてから代金を支払うまでの期間です。

支払いサイトが短いと売上の入金がないままに仕入れ代金を支払うことになりますので、運転資金が必要になります。しかし、運転資金が不足すると仕入れの支払いが滞り、倒産状態となるのです。

この場合、売上とそれに対応する仕入れがすでに計上されているために、損益計算書上は黒字になっています。

しかし、貸借対照表では売上分は「売掛金」として計上され、現金が仕入れ分だけ減少している状態になります。この状態が続くと資金が不足し、黒字のまま倒産してしまうのです。

特に業績が好調で仕入れ・在庫を増やしていかなければならない場面では、運転資金の不足に陥りやすくなり、黒字倒産につながる可能性が高くなります。

不良在庫を抱えてしまっている

在庫が予定通りに売上につながってスムーズに現金化されれば問題ありませんが、市況の悪化や環境の変化、消費者のニーズ・好みが変わってしまうことによって、仕入れ分が不良在庫になってしまうことがあります。

不良在庫が現金化できないままに仕入れ代金を支払うことが続くと、手元資金が減少し、いつしか黒字倒産してしまうことになります。

取引先の経営悪化

取引先の経営悪化によって売上代金が予定通りに入金されないことで資金不足に陥ってしまうケースは、大企業が黒字倒産してしまう典型的な事例です。

このケースは事前の予測が難しく、取引先の経営悪化によって予定通りの期日の入金されないことが判明するのが入金予定日の直前であることも多いために、黒字倒産の引き金になりやすいのです。

黒字倒産しないための3つの対策

黒字倒産は企業業績が一見好調に見えることから、経営者の立場でも直前まで倒産の危険に気づかないことも少なくありません。

黒字倒産しないためには、日ごろからキャッシュフローを重視した経営を行っていくことが重要です。

また、不測の事態で資金不足に陥ってしまった場合に備えて、借入やファクタリングなどの資金調達手段を準備しておくことも大切でしょう。

キャッシュフローの予実管理を行う

資金繰り表を作成して、日々のキャッシュフローの予実管理を行うことは、黒字倒産を避けるための最も基本的な対策です。

できれば3か月から6か月分の予算を作成しておき、定期的に実績との比較検討を行うべきです。財務担当者に任せておくのではなく、定期的にミーティングを行って経営者自らチェックし、現在の財務状態を把握します。

特に事業拡大時は仕入れを増加させたり、設備投資をしたりとキャッシュアウトが多くなってきますので、運転資金が足りているかについてはこまめに確認することが肝要です。

入金サイト・支払いサイトを交渉する

仕入れの支払いサイトが当月締め当月払い、入金の支払いサイトが当月締め翌々月払いになっているケースがときどき見かけられます。

運転資金に余裕がないのであれば、入金の支払いサイトを翌月にしてもらうなどの対応によって、資金繰りを改善していくことが大切です。

中には、サービスの提供が完了するまで数か月を要するようなプロジェクトもあるでしょう。

そのような長期間のプロジェクトでは、期間中の人件費やその他の経費が先にキャッシュアウトしていきますので、資金繰りが厳しくなりがちです。

その際には、契約金、中間金などを設定し、少しでも資金を回収するしくみを取り入れることをおすすめします。

借入れやファクタリングなどで資金調達する

取引先の財務状態の悪化など、不測の事態によって資金に困ってしまったときには、速やかに資金調達を行う必要があります。

急に金融機関と交渉しようとしても、融資まで時間がかかるケースがほとんどなので、日ごろから金融機関とはコミュニケーションをとっておきましょう。

可能であるならば、融資枠を確保しておくなどの対策を講じておくことも有効です。

最近では、ファクタリングを提供する金融機関、ノンバンクも増えてきました。

ファクタリングとは、支払期日前の売掛債権を買い取ってもらえるサービスです。買取金額は債権者の信用度によって異なりますが、債権額と買取額の差額が手数料になります。

ファクタリングも窮地に陥ってからでは手遅れとなる可能性もありますので、平時のうちから、ファクタリング会社に相談しておくとよいでしょう。

キャッシュフロー経営で黒字倒産のリスクを防止

黒字倒産は珍しい事例ではありません。東京商工リサーチの調査によると、2020年の黒字倒産と赤字倒産の割合はほぼ半々となっています。

本業で利益が出ているにも関わらず、手元資金が不足してしまったために倒産してしまうケースがこれだけ多いのは、キャッシュフローを重視した経営をおろそかにしている企業が多いことを意味しています。

計算上の事業収支はもちろん重要ですが、資金繰り表を作成し、日々のキャッシュフローをチェックすることも同じぐらい重要です。

長期的な視点に立って、キャッシュフローをいかに増やしていくかを考えていくことが、経営の安定性をもたらします。

 


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このブログを書いた人

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