CAPEXやOPEXは経営管理や不動産投資等で使われていた用語ですが、最近ではITシステムの構築、DX化の文脈でもよく用いられているようです。

経営資金をいかに効率的にキャッシュフローに結び付けるかを考える際には、CAPEXやOPEXの管理が欠かせません。
今回はCAPEXとOPEXの違いやその管理方法についてご紹介します。

CAPEXとOPEXの違い

CAPEXやOPEXはともに企業経営上の支出項目を分類するための用語ですが、その支出の性格によって両者が分けられています。

支出された経費を適切に分けて管理することは、資金管理がしっかりと行われているか、支出がどのように売上・利益に結び付いているかを把握するうえで必要不可欠なことといえます。

CAPEXとは「資本的支出」と訳され、保有資産の価値を維持・向上させる目的で支出される費用をいいます。
不動産投資においては、建物の価値を向上させるために行う躯体や外壁の更新費用やエレベーターや共用設備の更新費用を指しますが、経営管理という面では、設備投資費用全般を指していうこともあります。

生産設備の購入費用やプラントの構築費用は代表的なCAPEXの例ですが、大規模サーバーの購入やITシステムを自前で構築する費用もCAPEXに分類されます。

OPEX(Operating Expenditure)とは

OPEXとは「事業運営費」をいいます。
事業に必要な経費全般、すなわち人件費、消耗品費、水道光熱費、広告費などの経費がOPEXです。

不動産投資においては、建物の修繕費について、CAPEXにあたる費用かOPEXかで線引きが難しい場合がありますが、建物の価値を向上させる費用か、従前の状態を維持・回復するための費用かによって会計上の処理の仕方が変わってきます。

CAPEXとOPEXの管理方法

CAPEXには将来的に利益を向上させるための投資という一面があるのに対し、OPEXは月次の損益の計算に直結する費用であるといえます。

このように費用としての性格が両者で異なるために、管理方法や支出を抑制するときの経営への影響については慎重に検討する必要があります。
費用の支出(経営上の投資)から売上・利益に結び付くまでの時間軸を考えて、支出が適正であるのかを判断することが求められます。

CAPEXとOPEXの経理上の取り扱い

CAPEX・OPEXの概念を経営判断に用いるためには、財務諸表にCAPEX・OPEXがどのように反映されるのかを理解しておくことが大切です。
まずOPEXは人件費・水道光熱費などの経費を指しますので、その大半は経理上の販売費・一般管理費と重なります。

もっとも、現実の支払いが発生しない減価償却費はOPEXに含まれません。
そのため、OPEXは、販管費から減価償却費を差し引いて算出されます。

一方、CAPEXは支出とともに販管費として経費化されず、資産計上されます。

経費として計上されるのは、毎年の減価償却費を計上するときですので、現実のキャッシュフローと経費計上との間にずれが生じます。
OPEXに比べて管理しにくい数字であるといえるでしょう。

CAPEXが増加したときに見られる傾向と管理方法

CAPEXが増加しているということは、生産規模の拡大のため、あるいは業務効率化のためのIT導入のためなど目的はさまざまですが、設備投資を積極的に行っていることを意味しています。
財務諸表上は資産計上されてしまいますので、CAPEXの管理は別の一覧表等を作成して管理することになるでしょう。

CAPEXは会社の成長を見込んで長期的な視点で支出することが多いために、すぐには売上・経費削減等の効果に結び付かないこともあるかもしれません。
したがって、CAPEX支出が効果的に行われているかどうかを見極める際にも、長期的な事業計画をもとにした予実管理が大切になってきます。

OPEXが増加したときに見られる傾向と管理方法

OPEXの大部分は販管費に計上されますので、販管費の項目ごとに月次推移・年次推移を作成することで比較的容易に管理が可能です。

もっとも、OPEXは多くの支出項目の合計ですので、OPEXが増加もしくは減少したからといって直ちに経営上プラスになっている、もしくはマイナスになっていると決めつけることはできません。

OPEXの各支出項目がどの程度増減しているのか、増えているならばそれに伴って売上げも増加しているのかをチェックする必要があります。
短期的な増減が経営上の数字にダイレクトに反映されますので、月次・四半期など比較的短期のスパンで効果を検証するのがよいでしょう。

CAPEXのOPEX化

近年では、ITの分野を中心として「CAPEXのOPEX化が進行している」といいます。

「CAPEXのOPEX化」とは、社内システムを開発・構築し自社で運用していくことから、外部のシステムを利用することをいいます。
多額のイニシャルコストをかけて自社でシステムを開発することは設備投資・CAPEXにあたります。
一方、月々の利用料を支払って外部のシステムを活用する形態は、利用料が運営費の一部として計上されますのでOPEXです。

大容量のサーバーを社内に設置するのではなく、外部のクラウドサーバーを活用することなどが典型的な例ですが、映画や音楽など現在さまざまな分野に広がっている、「サブスクリプション」の感覚に近いかもしれません。

CAPEXのOPEX化が進行している理由

CAPEXのOPEX化が進行している大きな理由の一つとして、ITインフラの技術革新のスピードが速いことが挙げられます。

ITインフラを自前で開発・構築するには多額の費用がかかるのに加えて、技術革新に合わせてアップデートしていくのにも相当な費用がかかります。
ときには、アップデートでは追い付かなくて、結局新しいシステムを開発しなければならないということも起こりえます。
これでは、CAPEXの費用対効果として十分な結果が得られません。

対して、システム構築・運用の費用をOPEX化できれば、その時代に合ったシステムを利用し続けることができます。また、システム開発のイニシャル費用に加えて社内のシステム運用のための人件費等の維持費用も削減できますので、キャッシュフローも改善されます。

特に定型化された業務管理システムや、在庫管理システムなどは、外部のシステムを活用することで余計な支出の抑制につながるでしょう。

CAPEX・OPEXを適切に管理する

CAPEX・OPEXを適切に管理することで、業績向上・業務改善のために投資したものが効率的に経営に生かされているのかをチェックすることができます。
OPEXは月次の管理がしやすいですが、CAPEXは数年かけて償却されるものであるために効果の測定に工夫が必要です。

いずれの費用も経営上必要であれば積極的に支出していくべきですが、目的達成にに見合う投資であったかどうかについては定期的に検証していくことが好ましいといえます。

このブログを書いた人

コンスピリート・ブログライター
コンスピリートの公式ブログライターが 不動産に関するお役立ち情報をお届けします。